わがお散歩仲間の
毒舌夫人のお見舞いに
夫(英国人)を同伴。
いつもは帰り際に
「ちょっとお願いしたいことが
あるんだけど、いい?」と
お手伝いを頼まれることが
多いので(例:ベッドの
シーツ交換、
食糧庫で腐ってしまった
野菜の始末など)今回は
私のほうから先手を取って
「何か仕事はありますか?」
「嫌だわNorizo、私だって
そう毎回毎回あなたの手を
煩わせたりはしませんよ」
それであちらのお宅を
辞去する時に毒舌夫人は
わざわざ玄関まで
見送りに出てくれて
ああ本当にお元気になって
よかったと思っていたら
(この間までは椅子から
立ち上がらずに
そこでお別れしていた)
「あ、そうだ、そういえば
ここにワスプ(捕食性の大型蜂、
人間に対しても容赦なく攻撃を
仕掛けてくるときがある)の
巣を作られちゃったのよ、
どうしたものかしらね?」
上を見上げると玄関の軒の部分に
特有のつぼ型の巣が出来上がっていて、
とはいえまだまだサイスは小型。
下からツボ巣(人間の拳大)を
眺めながら夫が
「・・・ワスプは庭の害虫を
食べてくれますから益虫ですよね」
「ふざけないで頂戴」
「奥様、こいつは本気ですぜ」
「・・・益虫だろうが何だろうが
玄関の入り口に
こんなものがあったら
危なくて仕方ないわよ」
「でもこれ、本当に中に
ハチが住んでいるんですか?
留守宅なのでは?」
・・・と言ったそばから
攻撃的な見た目のハチが一匹
ツボ巣の底から飛び出して来て
我々の周囲を威嚇的に一周した後
庭のほうに飛んでいきまして。
「・・・住人、いますね」
「そうなのよ、困るでしょ?」
「僕にこの巣をどうにか
して欲しいってことですか?」
「あら止めて、そんなの危険よ、
・・・でもそうね、あなたが
どうにかしてくれるって言うなら
今、奥から専用の
スプレーを取って来るから・・・」
「スプレーなんて必要ないですよ、
押し潰せば(squash)いいんです」
「いやいやいや、ワスプを
甘く見てはいかんだろ、
巣を叩き落としたら中から
怒ったハチが飛び出てきて
とんでもないことになるぞ」
「これくらいの
小ささなら大丈夫です」
「駄目よ、小さくたって
危ないわよ、スプレーを
持ってくるから・・・」
私と毒舌夫人の言葉を
夫は右から左に聞き流しつつ
周囲を見回して
「あそこにある木材を
使っていいですか?」
夫が指さしたのは
1メートルくらいの長さの杭で、
いや待てお前それで
蜂の巣を叩き落とす気か?
「おい本気かよ!
私は車の中に待機するぞ、
あと君がハチに追いかけられても
私は車のドアを開けないからな!」
「そうよ悪いけど私も
ドアを閉めさせてもらうわ、
窓も全部閉めますからね!」
それで私と毒舌夫人が
それぞれ安全地帯を確保して
夫の挙動を眺めておりましたら、
わが背の君(普段はまったく
暴力的ではない性格)ったら
杭を下から支える形で持ち上げると
一瞬の躊躇さえ見せず蜂の巣を
杭の先端・・・というか
先端の反対側というんでしょうか、
尖っていなくて平坦な部分のほう、
そっちで下から一気に
ドンッと押しつぶし、
そのまま容赦なく腕の力で
ぐいぐいとツイストを加え・・・
夫が杭を下ろすと同時に
ワスプの元・巣は
ぼとりと床に落ちて
・・・というか実際にはほとんど
落下するようなものは残っておらず、
ほら、蜂の巣って中身は
小部屋に分かれていて空間が
多いじゃないですか、だから・・・
気が付けば
私の顎も落ちていました。
ふと窓越しに確認すると
毒舌奥様も呆然とした顔を
していらっしゃいました。
そんな中、夫は杭の
・・・蜂の巣をすり潰した側を
毒舌夫人に示し作業終了の合図、
最初にあった場所に戻すと
片手を挙げて夫人に挨拶、
車に乗り込んできて・・・
「・・・割と暴力的だったな」
「えっ、そうですか?」
時々・・・
時々私が夫に
恐怖を感じるのは
こんな時だったりします・・・
こんなこと夫本人に言ったら
絶対喜ぶので言わないですけど
雰囲気としては私と夫の
『ザ・コンサルタント
(The Accountant)』の
ラストシーンのようでした
私と毒舌夫人が
ダブルキャストでブラクストン役
・・・予期せぬ破壊行動って
本当にド肝を抜いてきますよね
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