朝の子羊授乳作業に

私が愛犬アーシー

(黄色大犬)を

同伴していることを

牧場主奥様が

毒舌夫人(当時入院中)に

教えたところ

「アーシーに私の分も

おやつをあげて頂戴ね」

 

「そうしてやりたい気持ちは

山々だけど、我が家には

犬用のおやつがないのよ」

 

「私の家の!玄関入って

すぐのところにある机の!

上から二番目の棚に

箱があってその中に

犬用おやつが隠してあるから!

それを探し出して

アーシーにあげて頂戴!」

 

しかし牧場主奥様は

毒舌夫人宅でおやつを

見つけることが

できなかったそうで

(二人は自宅の鍵を預け合う仲)。

 

 

授乳作業後に

私と牧場主奥様で

そんな話をしていたら

その横をわがアーシーと

この日もこちらの牧場に

預けられていた例の

日々駄犬呼ばわりされている

美男犬君(ボーダーコリー)が

するすると通り過ぎて行って

「・・・あれ?あの2匹、

今どこに行きました?

もしかして別棟に

行ってしまったのでは?」

 

「気にしないで大丈夫よ」

 

「でも別棟には子羊用の

ミルクや何かが

置かれていますよね?

アーシー!戻って来なさい!」

 

戻ってきたアーシーは

つまみ食いをした時特有の

舌なめずりをしていなかったので

まあたぶん盗み食いは

未遂だったと思うのですが

念のため愛犬の口の周りの

ニオイを嗅ぐ私の姿が

ちょっとアレだったのか、

台所でお茶を飲んでいた

牧場主奥様の息子さんが

「気にしないでいいよ、

この時期にうちに遊びに来た犬は

皆、子羊用ミルクを盗み舐めして

口の周りを白くするものだからさ」

 

「いやいやいや、そちらが

そうやって寛大に

気になさらないでくださっても

私が気になるというか、

アーシーは英国盲導犬協会から

私が責任を持って引き取った犬、

そんな子羊用ミルクなんて

栄養のかたまりみたいなものを

迂闊に舐めさせて

体重を増やしてしまっては

フォルファ(盲導犬協会の

スコットランド支部がある)の

関係者の皆様に

あわせる顔がございません」

 

「で、でもアーシーは別に

太っていないと思うけど」

 

「それは私が日々本気で

食餌節制を

徹底しているからでございます」

 

我々の会話を聞いていた

牧場主奥様が

ここでため息交じりに

「毒舌夫人ちゃんが言っていたけど

アナタって本当に

犬の食事に厳しいのねえ」

 

「それほどでもないですが、

それはほら、毒舌夫人が

こっちの隙を見つけると

すぐにアーシーに

何か食べさせようとするので

私が厳しく見えるだけですよ」

 

それが数日前の話。

 

で、本日。

 

こちらの牧場は

ネズミ捕獲師団として

猫を複数頭

飼育しているのですが、

朝の餌はカリカリ系の

キャットフードを

お湯でふやかしたものらしく、

奥様が別棟から

大きな袋を抱えてきて

準備をなさろうとするのを

「お手伝いしましょうか」

 

「平気平気、あなたは

そこでお茶を飲んでいて」

 

奥様は慣れた手つきで

袋の封を切って

餌を適量洗面器に出して

そこにポットのお湯を注いで、

で、何故かまた袋に手を入れて

その手を握った状態で出すと

こそこそ声で

「アーシー、こっち来なさい!」

 

それで!

 

奥様ったらわが愛犬に

キャットフードを与えようとして!

 

「何をなさる何をなさる!

うちの犬は猫の餌は食べませぬ!」

 

「そんなことないわよ、

この間見ていたらうちの駄犬が

アーシーに開封済みの

猫餌の袋を紹介して

アーシーは無邪気に

そこに顔を突っ込んでいたもの」

 

「それはうちの犬が

盗み食いをして

申し訳ありませんでした!

でもアーシーには犬の餌以外を

与えたくないのでございます、

どうかご了承くださいませ」

 

「わかったわ、ごめんなさいね」

と牧場主奥様は

素直に謝罪なさってから

担任に注意を受けた

昭和の時代の

不良少女のような顔で

横を向いて

「・・・毒舌夫人ちゃんは

正しかったわね、あなたが

部屋にいない時を狙って

おやつを与えるべきだったわ」

 

「今、何か聞き捨てならない

ことをおっしゃいましたね?」

 

「そんなそんな、

変なことは言っていないわよ、

ただ毒舌夫人ちゃんがね、

アーシーにお菓子を与える時の

コツを私に教えてくれてね・・・」

 

お二人は私のいないところで

どういう会話をなさっているんですか?

 

今後あのお宅にお邪魔する際は

アーシーから目が離せないことを

理解した私でございます。

 

 

ちなみにアーシーが猫餌袋に

鼻を突っ込んでいる時、

駄犬君はその隣に

ぴっと背筋を伸ばして座って

「僕のおもてなし、

気に入ってもらえましたか」

みたいな顔をしていたそうです

 

いやそれはね?

 

お客を迎える際の

マナーとしては

間違っていないけどね?

 

なお毒舌夫人はさておき

牧場主奥様の

アーシー餌付け作戦は

これまでのところすべて未遂

 

たぶんあれは毒舌夫人への

お見舞い用土産話として

「アーシーにおやつを

与えようとしたけど

Norizoにバレて

叱られちゃった」のネタを

仕込んでいるのだと思います

 

明らかに私に露見することを

期待しての動きというか何というか

 

・・・ネタを仕込むって

これはコント裏話か何かですか?

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