三つ子の魂

なんとやらシリーズ

私の中には

『仕事・御用に行った先で

長居をしてはいけない』

みたいな考え方が根強くあり、

つまりこれはですね、

子供の頃に祖母に連れられて

近所の家におつかいに

出たりするじゃないですか、

玄関先で話を済ませて

帰ろうとすると

先方が礼儀として

「ちょっとあがって

何かお飲み物でも、

お嬢さんには

お菓子があったかな」

みたいなことをおっしゃる、

すると祖母は必ずそこで

「いえいえ、お邪魔をしては

申し訳ありませんから、これで」

 

で、帰り道に私に

「皆さんお忙しいんだから

用件が済んだらさっさと

辞去しなくちゃいけないのよ、

お茶でもどうぞは社交辞令

 

さてそんな私は現在

毎朝近所の羊飼いさんの家に

子羊の授乳のお手伝い

行っております。

 

お手伝い初日、

右も左もわからない私が

それでもなんとか仕事を終えると

台所から羊飼い奥様が

「Norizo、あなたは

コーヒー?紅茶?」

 

 

 

 

 

 

祖母の薫陶に従い私はそこで

「いえ、結構です、

どちらもいただけません」

 

「なーにを言ってるのよ、

コーヒー?紅茶?早く決めて」

 

あ、じゃあコーヒーで、と

答えた私に羊飼い奥様は続けて

「トーストは白パン派?

それとも茶色パン派?」

 

 

 

 

 

「いやいや本当に

そこまでしていただいては」

 

すると奥様はちょっと

気分を害した口調で

私の指導役である毒舌夫人に

「ちょっと!この見習い、

トーストは食べないんですって!」

 

「ああ、この人遠慮するのよ、

Norizo、白パンか茶色パンか

さっさと選んで、さもないと

私が勝手にパンを選んで

アナタも分も焼いちゃうからね」

 

「・・・茶色でお願いします」

 

というわけで

お手伝いが終わった後

私は毎回必ずあちらの台所で

コーヒーとトースト

(自家製ママレード付き)を

いただいているんですけど、

そして自分で言うのもなんですが

近頃の私は仕事に慣れてきて

子羊への授乳は5分で完了、

飼料と水の取り換えに5分、

そこから哺乳瓶の

洗浄・消毒に10分の

20分で全体の仕事を

終わらせているのですが、

この軽食で結構長居をしていて・・・

 

 

あれはかえってご迷惑なのでは、と

ずっと悩んでいたのですが、

毒舌夫人曰くこうでもしないと

「あの人(羊飼い奥様)は

ずっと働きづめになっちゃうのよ、

あの人何でもできちゃうから

あれして頂戴これして頂戴って

ずっと頼まれちゃうの、でも

私が台所にいたらね!

私の相手をして頂戴って言って

あの人に休んでもらえるでしょ!

だからこれもね、業務の一部!」

 

そんなわけで私は毎朝

コーヒーとトーストを

美味しくいただいております、

副産物として近所の噂話にも

かなり精通してしまいました、

郷に入っては郷に従えで

英国牧羊社会の社交術を

学んでいるところでございます。

 

 

そして間違いなく

私の噂話も現在ご近所に

広まっていることと推察されます

 

ハッハッハ

 

・・・Norizoさんて

変なところ図太いですよね

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