kyupinの日記 気が向けば更新 -891ページ目

トフラニール

一般名:イミプラミン

半減期:9~20時間(未変化体) 代表的な3環系抗うつ剤のひとつ。うつ病の他、夜尿症などにも使用される。一般に、原因のはっきりしない疼痛はうつ状態が背景にあることがある。そのような痛みに試みる価値のある薬物でもある。しばしば、抗うつ剤の新薬の治験で2重盲検の対照薬物になっている。効果は強い方である。3環系抗うつ剤の中では眠さが比較的少ないという特徴がある。トフラニールは構造式がコントミンと良く似ている。もともとコントミンなどの抗精神病薬を作ろうとしていて、偶然発見された歴史を持つ。トフラニールはそれ自体バランスの良い薬物プロフィールを持つ。セロトニンとノルアドレナリンの再取り込み阻害作用は五分五分である。しかし体内でデシプラミンに変化し、これは強いノルアドレナリンの再取り込み阻害作用を持つ。したがって全体としては、ノルアドレナリンの再取り込み阻害作用が強くなっている。ドーパミンの再取り込み阻害作用はほとんどないか、わずかである。(日本ではデシプラミンは発売されていない。世界的にみても発売されている国は少ない)

 

ナルコレプシーという疾患があるが、これは睡眠発作などの特徴のある症状がある。ナルコレプシーを精神科外来で初診でみることは極めて稀である。睡眠外来などを専門を標榜している病院なら、わりと診るのかもしれないが。ナルコレプシーなど眠さを主訴に初診するように思えるが、実は必ずしもそうではなくて、意外に不眠を訴えて来院したりする。睡眠のバランスが崩れているためだ。そこで、うつ病と(誤診して)トフラニールなどを処方して、偶然、ナルコレプシーも良くなったりするらしい。これはけっこう有名な笑い話だったりする(過去形)。トフラニールは、ナルコレプシー、周期性傾眠症、夜尿など、精神科でも睡眠にまつわる疾患に親和性が高い。ナルコレプシーや周期性傾眠症など、いつも眠くなるような疾患に使えるところが、3環系でも比較的眠さが少ない薬物らしさが出ていると思う。

 

ところで、副作用だが一般の3環系抗うつ剤とあまり大きな相違がない。(口渇、便秘など) 現在、僕の患者さんでこの薬物を処方している人は、たった数人しかいない。数えたことがないのだが、おそらく10人もいない。一時、この薬物で治療していても、後にトリプタノールやアナフラニールに変えてしまったりするからだ。うつ病メインで治療している際に、トフラニールからトリプタノールに変更した場合、同じミリ数でも以前より良いという人が多いので、やはり薬効的には、トリプタノールの方がやや強いのかなと思う。しかし、アナフラニールやアモキサン程度なら、あまり差を感じない。

(これは2000年頃にウエブにアップしたものをいくらか加筆したものです)

 

デパス

一般名;エチゾラム

これはマイナートランキライザーで、吉冨薬品の自社製品。マイナートランキライザーのうち、純粋に日本製というのは少ないんじゃないのだろうか?日本製なので、特にアメリカに輸出していることもなく、日本でとても使われているわりに資料がない薬ではある。アメリカで発売されると、FDAが気合を入れて調査するのでエビデンスが充実する。アメリカでは、個々の薬剤について催奇形性などのランキングが公式に発表されており、非常に勉強になるというか医師からすると助かる。アメリカで発売されていないくらいなので、日本しか売られていない薬剤かと思っていたが、韓国でゾロが売られているという話もある。(未確認) デパス非常に安価な薬であり、以前はデパスにゾロがあるのが不思議でたまらなかった。(ゾロ=ジェネリック) しかし、このように安価な薬物でもゾロになると病院の納入価が正規品より安いので、意味があるのである。つまり定価からの値引率が大きい。これを薬価差益が大きいと言う。しかしなにしろデパスは安すぎるので、メチャクチャな量を処方しないと、元が取れないというか、ゾロを導入した甲斐がないのではないかと思われる。


さてデパスだが、0.5mg、1mgの2剤型があり、1mgが若干大きい。1日に0.5mg~せいぜい3mgまでが使用範囲であることが多い。もともとの薬効だが、不安といわゆる分裂病(統合失調症)の不眠に適応があった。今は、統合失調症の不眠と言っても、病名にこだわらず使用されるようになっている。つまり、デパスは昼も夜もいつでも使える薬剤なのである。抗不安作用はマイナートランキライザーの中では強い方で、眠さも慣れるとそれほどではなくなる。半減期が短い方であり、ハルシオンに見られるような健忘が出現することがある。筋弛緩作用もあり、時に老人の転倒や若い人でも階段で空足を踏むような影響が出ることがある。僕はデパスは一般科で使われ過ぎだと思う。筋弛緩作用が強調されて、肩こりなどに安易に使われている。デパスは、(精神的に)何もない人に使うには強すぎる。デパスは、ごく軽度のうつ状態に効果があるように見えるが、本格的うつ病にはほとんど効果がない。しかし、本格的なうつ状態にも、それに付随する恐怖、不安には上乗せで効果が期待できる。ちょっと不思議な作用ではある。


ところで、上に分裂病の不眠と書いたが、もともとこんな経緯があるのか1ヶ月処方が可能である。実は本邦では睡眠薬全般が管理を厳しくすべき薬剤の範疇に入れられており、たいていの睡眠薬は2週間処方までしかできない。しかしデパスは1ヶ月処方が可能なのである。ロヒプノールやハルシオンなどが2週間処方までしかできないのはなんとなくわかる。一方、アモバン、リスミーなどが1ヶ月処方可能なのがよくわからない。このあたりは、少し緩めてもらわないと臨床的にはちょっと困るルールなのである。今年の薬価改正時に、精神病院協会がすべての睡眠薬を1ヶ月処方できるように国にお願いを出していた。その後、処方できるようになったとか話を聞かないので、きっとアクセプトされなかったんだろうなと思う。僕は、デパスはあまり使わないタイプの精神科医に入る。最も使わないタイプくらいかもしれない。全然使わないってことはないけどね。


この連休は・・

このブログは日記なのに、日記らしいことが全然書かれていない。ちょっとそれらしいことを。この連休は東京に遊びに行った。毎回、嫁さんが意味なくついて来る。金曜日から2泊3日のスケジュール。ある目的があったのだが、それは内緒。日曜日の夜に帰ってきて、今日(月曜日)は午前中だけ出勤。今回は僕はほんとすることがなくて、有楽町のビックカメラで音楽のDVDを買ったぐらい。計6本ほど買ったが、これは別に東京で買わなくても良いもので、単に荷物を増やしただけだった。ビックカメラは音楽DVDの専門店でなんでもないのだが、結構揃っていたような気がする。あまり高いものはなくて、2300~3600円以内のものが大半だった。特に輸入盤を選んだ。実は、輸入盤の方が録音状態が良いような気がしているからだ。それでわりと安かったのだが、僕の場合、5000円以上すると買うかどうか少し迷う。


DVDは、CDに比べ音質自体はやや落ちるとされており、おまけに録音状態があまり良くないものが含まれる。(ライブの場合) インタビューが多すぎて、たいして曲がないものもある。今回は、帰ってきて、まだ2枚しか聴いていない。たいてい、東京に来たら秋葉原に行くのだが、今回は行くタイミングを逸した。ちょっと良くなかったことは、デジカメが壊れていたこと。撮るときに気付いた。いつのまに壊れたんだろうという感じ。ずっとデジカメの小型で軽いものを買いたかったのだが、、今のカメラも自分には十分なほど高性能なので、いざ壊れてしまうと修理したくなる。全然傷もついてないしまだあまり使用してもない。ま、使わないから壊れやすかったりするのだけど。あと以前からの友人に会った。彼は東京の人で東京で仕事もしている。ずっと以前は、掲示板でのみ会った(というのも変だけど)ことのある人だったが、一度オフ会をして以来、たまに会うようになった。もう最初に会ってから、4~5年経ってしまったのではないかしらん。彼は僕よりかなり若いが、最初に会う前は、もう少し年齢が近いかと思っていた。ネットの世界は、年齢はわかりにくいね。今回、新宿で飲んで奢ってもらった。というか、いつも奢ってもらうのだが。


会う直前、銀座で食事をしていたのだが、コースの食事が来るのが遅い遅い。予定が狂って大幅に遅れた。午後9時半頃に会う予定だったが、実際会ったのは11時に近かった。彼には全く気の毒だった。今回の話題だけど、Wカップの反省会。というのも、あまりにもふがいない結果だったので、何が悪かったかが話題になった。もちろん結論は、(以下自粛・・ もっとも、僕らが反省しても何も変わらないのだけどね。僕はイタリアの優勝をブログで予想しており、そのとおりになった。ま、イタリアがドイツに勝った時点で変更したのだが。イタリアは、セリエAで大不祥事があったため、今回は予選リーグさえ勝ち抜けない可能性もあると思っていた。しかしチェコに強い勝ち方をしたので、始まる以前より評価を上げた。彼は、明け方の試合はすべてテレビで生観戦したんだそうだ。なんという気合。僕は、そこまでのガッツはない。体力もないけど。イタリアの勝因だが、前回のユーロ2004の最後の試合に伏線がある。(と思う)


イタリアは、ユーロ2004ではグループリーグで敗退した。最終戦、イタリア、デンマーク、スウェーデンの3国に決勝トーナメント進出の可能性が残されており、ブルガリアは可能性がなかった。イタリアは、エース、トッティが相手選手に唾を吐いて3試合出場停止の重い処罰を受けたこともあり、苦しい戦いを強いられていた。グループ最終戦は、デンマーク対スウェーデン、イタリア対ブルガリアが同時刻に行われ、もしデンマーク対スウェーデンが2-2以上のタイスコアで終わった場合、イタリアは勝っても可能性がないという厳しい条件であった。しかしサッカーを良く見る人ならわかるが、サッカーの試合で2-2以上のタイスコアなんていう結果はそう起こるものではない。サッカーは、普通、2点取れば、勝てるスポーツだからだ。イタリア対ブルガリアは大変な試合になった。ブルガリアは勝ってもおかしくないほどの良い出来で、それまでのテイタラクがウソのようであった。1-1の同点のまま終盤になり、ブルガリアはペナルティエリア付近のフリーキックのチャンスを得た。


この時、イタリアのゴールキーパー、ブッフォンのスーパープレーを見た。至近距離から放たれたブルガリアのフリーキックは壁を越えて、ほとんど直前までキーパーからは見えないような曲がり方で来た。それをブッフォンは、超人的な反応ではじいたのである。大ピンチをしのいだイタリアは終盤、パワープレーを展開しロスタイムに奇跡的にカッサーノがゴールを決め勝利する。結局、デンマーク、スウェーデン、イタリアは勝ち点5で並んだのだが、デンマーク、スエーデンが2-2で引き分けたために、イタリアは3位になってしまった。


デンマーク対スウェーデンは、2-2になった時点で双方積極的には攻めず大人しい展開になった。なぜなら、イタリアがいかなる結果になろうと、その2チームの決勝トーナメント進出が決まっていたからである。試合終了後、決勝点を決め大喜びするカッサーノに、グループリーグ敗退が伝えられる。みるみるうちに落胆の表情に変わった。あれほどの残酷な結末もそうないであろう。試合前には、イタリアはブルガリアに勝てばほぼ大丈夫と思っていたはずだ。僕はイタリアのこの終わり方がとても良かったような気がしている。ライバルの展開次第では勝っても仕方がないのだが、それでもなお全力を尽くして戦い勝利した。これこそ勝負の女神が微笑むきっかけであり、今回の幸運を呼び込む伏線であったと思っている。



ワイパックス

一般名:ロラゼパム

代表的なマイナートランキライザーの1つ。皆はそう思ってないだろうが、いわゆる公認の正統派マイナートランキライザーなのである。興奮時にあたかも抗精神病薬と同じようにこの薬物を静注、あるいは筋注するという治療スタイルがある(ここが正統派)らしいが、本邦ではこの注射液が発売されていない。本邦ではおそらくデパスほどは使われていないと思う。一応、高力価の抗不安薬とされている。薬効だが、換算表から言うとワイパックスの方が2割方強いことになっているが使用感はそれほどではない。 たぶん眠さや筋弛緩作用などの副作用の出方の違いから来ると思われる。


ワイパックスは、レキソタン、ソラナックス、デパスのようなインパクトが乏しく、むしろ大人しいタイプのマイナートランキライザーのように感じる。作用の発現は早い方で、半減期15時間。作用時間は8時間~12時間とされる。個人的には、ワイパックスはデパスやレキソタンよりややライトで、セレナールやリーゼ よりは強いという印象。1つの特徴として、ワイパックスは肝障害の患者さんにも処方しやすい。(肝臓で1回しかグルクロン酸抱合を受けない) しかし、普通、精神科医はそこまで考えて処方はしていないと思う。なぜなら、マイナートランキライザーは全般に極めて肝障害を起こしにくい薬物群に位置するからだ。

(これは2000年頃にウエブにアップしたものをいくらか加筆したものです)


ドグマチール

一般名;スルピリド

(=アビリット)

精神科でこの薬ほどいろいろな疾患に処方されているものはないと思われる。一般には軽度のうつ状態や統合失調症に処方されている。その他、食障害や境界型人格障害のような神経症範疇の疾患やてんかんの精神症状などにも広く処方されている。精神科医からすれば、とりあえず失敗が少ないし効果が比較的早く出るので、非常に便利な薬といえる。ドグマチールをうまく使える精神科医は、非常に名医なのだ。(自覚症状を早期に改善することが多く、精神科に来た甲斐があると感じる。) 普通、抗パーキンソン薬の併用の必要がなく、1日、1回処方で問題ない。(夕方だけ150mg服用とか) 半減期もわりと長く効果が安定していて、仕事をしている人が困るほどの副作用が少ないので、敷居が低いのである。健康な人が服用した場合、少し眠い。しかし既に他の向精神薬を服用している場合や、長く精神疾患を患っている人には眠さが感じられないことも多い。


ドグマチールはほんの数年前まで、精神科外来できわめてウエイトが高い向精神薬だった。特に軽度のうつの場合、とりあえずこの薬で軽快する確率はかなり高かった。長く患っている患者さんでも、初診当初にドグマチールを服用して、その時はいったん良くなった記憶がある人が多い。これは、必ずしも病名にかかわらない。現在でもなお有用であると思うが、近年に限れば少し様相が変わって来ていると思われる。その原因はデプロメール、パキシル、ジェイゾロフトなどのSSRIが発売されたことと、インターネットの普及である。インターネットによる検索、情報交換が可能となり副作用が見過ごされなくなった。(患者さんの副作用に対する意識が高まったと言える) ドグマチールの重要な副作用に、高プロラクチン血症およびそれにともなう女性の乳汁分泌、無月経がある。男性ならば、インポテンツや性欲低下などが起こりうる。肥満の副作用も広く知られるようになった。現代社会では、肥満の副作用は、非常に重要視されている上記の副作用はSSRIの場合、無いか、非常に少ないので、ドグマチールよりも処方が多くなっているのである。ドグマチールはSSRIの発売以来、相対的な価値は低下してきていると思われる。使用量であるが、普通100mg~600mgの範囲で処方されることが多い。(50mg、100mg、200mgの剤型があり、2~3錠の範囲で出されやすい) 時に1200mgだとか、2000mgの高用量の処方がされることもある。これは特別な事情によるが、大量に処方する場合、中程度の抗精神病薬のように振舞うことが理由のひとつである。


知っておいてほしいのが、SSRIとドグマチールは作用機序が全然違うので、ドグマチールで良かった人がSSRIに変更して必ずしも良いわけではないこと。現在でも、SSRIよりドグマチールが断然良い場合もけっこうある。現在では、僕はドグマチールを比較的処方しないタイプの精神科医に入る。以前は好んで使っていた時期もあったが、今はなるだけこれを使わないで治療する努力をしているのだ。現代社会では、「ドグマチールは必要不可欠な薬物である」というほどの評価はしていない。ドグマチールはフランスで開発され、日本でも長期間使用されてきた。しかしこの薬はアメリカでは未発売で、そのためアメリカでの研究がほとんどなされていない。すなわち、かなり有名な薬物ながら、意外にワールドワイドな薬ではない。ある時(2000年以前)、アメリカの本屋で精神科薬物についての書物を立ち読みしていると、トピック的にスルピリドのことが触れられていたことがあった。非常に短かったが、最後に「まぁこれは(アメリカ国内には)いらんだろう」と書かれてあったので笑った。プロザックなどSSRIの歴史が長いし、これからアメリカで発売されることはないと思う。(これは2000年頃にウエブにアップした過去ログを加筆したものです)