本日、物凄く長文ですので、お時間の有る時にどうぞ。


では、


今では『認知症』と言いますが、ちょっと前までは『痴呆症』でしたね。

メールでの質問で、結構多いのが

『かづぷーさんのお姑さんは痴呆だったんですよね?
 なぜ介護をする事になったのでしょうか?
 そして、なぜ介護が出来たのでしょうか?
 私なら、絶対に出来ません!!』

と言う内容だ。


今年で結婚生活24年目なのだが、姑の七回忌だったと言う事は、実質私と姑との嫁姑戦争は18年になる。

しかし、亡くなる前の1年間と言うのは、いわゆる呆けた状態なので、嫁イビリなどは全くされてはいない。

前回書いた嫁姑戦争部分からは、遥かに時間が経過している話なので、その間の事はまた別に書く事にして、今回はあくまでも姑の介護をする事になったいきさつを書こうと思う。



まず、質問にあった

『なぜ介護が出来たんですか?』

だが、正直言って、全く介護なんてするつもりは無かった。

無かったと言うか、

『する筈では無かった』

と言った方が正しい。

なぜなら、長年ウチの夫が言い続けていた事は、

『ウチのお袋は自分で言っている様に、相当の金を持っている。
 そして、その金で、お手伝いを雇うか有料の老人ホームに入ると言い切っている。
 なので、かづぷーは一人息子の嫁だけど、少なくとも親の面倒は看なくて良い訳だ。
 老人介護が無い分幸せだと思って、我慢して欲しい。』

と言う内容だった。


現に、姑自身も常日頃から私に直接言っていた。

『お父ちゃん(舅の事)の退職金は、少なくとも6千万円はある。
 預貯金や株券だけでも3千万円ある。
 年金額は、お父ちゃんだけで1ヶ月27万円貰える。

 と、言う事は、アンタに何一つ面倒看て貰う事なんか無いんだから



 思う存分イジメさせて貰えるって事だ♪


こんな事を常日頃、嫁の私本人に直接言っていた訳である。

面倒看て貰うつもりが無いから、思う存分嫁イビリが出来ると思う事自体が、姑の価値観なのである。

そして、いくら腹の中で思っていたとしても、それを嫁に直接宣言し、堂々と胸張って嫁イビリし出すのも、姑の価値観なのだ。




では、そこまで言い切っていて、ましてや金の有る舅姑の面倒を、なぜ同居してまで看る事になったのか。

答えは簡単である。


金が無かったからだ。


では、姑が嘘をついていたのかと言うと、それは違う。

実際に、その発言を私にしていた当時は、確かにそれだけの財産が有ったのだ。




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当時私達家族は、姑の住んでいるマンションのすぐ近くに住んでいた。

前にも書いたが、夫が姑の近くの市住に申し込み、そこに当たって引っ越していたからだ。

しかし、その市住に住んだ僅か3年半後の事である。

再び引っ越す事になった。

なぜなら、姑は自分の息子が市住に住んでいるなんて格好が悪いと思っていたから、勝手に不動産屋を呼んで、夫にマンションの契約をさせてしまったのだ。

それも、更に近い所に。

『させてしまった』と言うのは、いささか御幣が有る。

夫も、ノリノリで有ったからだ。

『一国一城の主になるのが男の夢』
『市住に住むのは不細工』


極めつけは

『男は借金背負えば仕事に励む』

だ。

切羽詰った状況に、すこぶる弱いこの男を見て、一体どうすりゃそんな事が言えるのか。

借金背負った時点で、すぐさま私にもたれ掛って来る様な奴なのに。

仕事に励むどころか、即、逃げ場所を探すんじゃないかと思う様な奴なのに。


何をどう反対しようとも、姑・夫・不動産屋で着々と話しは進む訳で、それも相手方が売り急いでいると言う事で、あっと言う間に契約してしまった。

どこにそんな金が有ったのかと言うと、当時夫は全ての保険を解約し、預貯金全てを解約していたのだ。

いわゆるスッカラカン状態と言う事である。


姑は

『スッカラカンになっても、マンション持つ方がイイに決まっているからね♪』

と、全く責任など取らない立場丸出しの、無責任さだった。

普通なら

『そこまでしてマンションなんて買わなくて良いんじゃないの?』

と、息子を諌(いさ)めるべきだろう。


そこを

『全て吐き出してでも買っちゃいなさい!!
 だって、賃貸なんて格好悪いじゃないの~。』


と言うのが、姑の価値観です。


で、ココから更に嫁イビリの激しさに拍車が掛かるのですが、それはまた別に書きます。


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近所に住む事になった私は、毎日の電話に加えて、しょっちゅう家事をさせられに呼び付けられていた。

そんな事は断ればイイじゃないかと思うだろうが、私が断ると、即、姑は夫の会社に電話するのである。

夫に電話を代わって貰うと、延々と私に対する文句を言う。

夫が仕事の都合で外出中と言うと、

『直属の上司に代わって下さい!!』

と言う訳だ。

そして

『○○の母ですが、親の言う事も聞けない嫁に、言う事を聞かせる事が出来ない息子です。
 今に会社に多大なご迷惑をお掛けしますので、即刻クビにした方がイイです!!』


と言うのである。

上司が代わらない時は、相手が受付の女性であろうとお構い無しに言う。

『貴女から見て、息子はどんな社員ですか?
 こんな息子をどう思います??』


こんな事を聞かれて、どう答えりゃイイんだ。

少なくとも受付の女の子よりも夫の方が上司になるので、そんな事を聞かれたってどうにも答えられんだろう。


当然夫は上司から

『家庭の事を職場に持ち込ませない様にしろ』

と言われる事になる。

しかし、そんな事は姑には関係ない。


小島よしおじゃないが、

『そんなの関係ねー!
 そんなの関係ねー!!』

なのである。


夫が姑に

『会社には電話してくれるな。
 会社に電話する事じゃないだろう。』

と言うと

『親に文句言う息子なんです!』

と、会社に電話をする。


夫は私に

『頼む、お袋はどんな事を言ってもどうにもならない。
 このままじゃ、会社を辞めなきゃならなくなる。

 お袋の言いなりになってくれ…。』

と言った。



姑は、息子をいつまでも自分の意のままに出来る物だと思っていたのである。












長男がまだ小学生の頃である。

私がいつもの様に姑宅に行くと、家の中が真っ暗だった。


ただ電気が点いていないと言うのではなく、昨日までのカーテンじゃない、いわゆる『遮光カーテン』に替わっていたのだ。


(゚Д゚≡゚д゚)エッ!?ドユコト??


真っ暗なのである。

電気を点けながらリビングに行くと、舅が真っ暗な中テレビを観ていた。

さながら映画館の様である。


リビングと続きに有る台所の電気を点け

『お義父さん、コレ、どうしたん??』

と聞いた。

舅は

『いやな、お母ちゃんが明るいのがアカンらしくて、昨日かづぷーが帰った後、急遽カーテン屋呼んで付けて貰ったんや。』

と言った。

『付けて貰ったって…』

私が前日の夕方帰った後、姑が電話で業者を呼び、サイズを全て測って貰った上で、その日の内に全室のカーテンを付け替えたそうだ。

勿論、レースのカーテンも遮光タイプだ。


『で?お義母さんは??』

『あそこにおるで。 (・・)σ--→』


舅が指さした所は、リビングの一番暗い隅だった。

そこで姑は、ツバ広の帽子を目深に被り、毛布に包まって膝を抱えていた。


『お義母さん…、どないしたんです?』

声を掛けても姑は動かない。

近くに寄って、肩を叩いて声を掛ける。

寝ている訳じゃ無いのは解った。


下から覗いて見た帽子の中の姑の顔は、一点だけを見てボーっとしていた。


私は医者ではないが、瞬時に精神的な病だと思った。

舅に

『お義母さん、いつから?
 昨日は具合が悪いって言うから寝てたけど、一昨日はそんな事無かったやん。』


と聞いた。

聞く所によると、以前から夜中に突然誰かがしゃべっている声がするだとか、カーテンの裏から小人(三角帽子で10㎝程度の子供)が手を振って笑っていたとか言い、舅を起こしていたらしい。



そんな大事な事、早く言えよジジイ!!



姑は緑内障と白内障の手術をしていたので、一時眩しいと言っていた時が有ったが、ここまでするのは明らかにおかしい。

私が舅におかしいと言っても、舅は

『ここんところ寝不足やったからやろ?
 グッスリ寝たら治るわな。』

と言った。

寝不足程度で、そんな急にカーテン屋を呼んで、全室遮光カーテンになんかしないだろうよ。

だって、カーテン代だけでも30万円強の出費だ。
(請求書があったので解った。)


舅は金銭の出し入れに対しては、小遣い以外は全く姑の好きにさせていた。

なので、いくら高価な物でも、姑が好きに買う事に何の興味も無かった。


私は夫が帰ってから、今日見て来た事を全部話した。


『お袋も疲れてんのやろう。
 悪いけど、面倒看たってな。』


やはり親子だ、舅と全く同じ事を言う。

ロクに家事なんかせずに、単にゴロゴロしては昼からビールを飲み、たまに友達と遊びに行っては上げ膳据え膳の姑が、小人が見えるほど疲れる訳がねーじゃないか!!


夫に、姑を病院に連れて行く事を勧めるが

『僕のお袋を病人扱いすんのか!?
 面倒看たないから、そんな事言うんやろ!

 それに、お前は医者か!?
 なに診断しとるんや!?』

と、激怒だ。


それからは、毎日毎日、映画館の様な暗室のマンションに通い、台所だけ電気を点けて食事の用意をし、食べられる様にしては電気を消した。

真っ暗の中、食べる時だけダイニングテーブル上の電気だけを点け、舅と姑は食事をする。

そして、食べ終われば消すのである。

洗濯する時は洗面所だけ電気を点け、洗濯が終われば消して、リビングの横の部屋からベランダに出て干す。

姑はいつもリビング隅に、毛布に包まって膝を抱えて座っているか、ソファーで横になっていた。

掃除機を使う時だけ、寝室に移動して貰った。


自分の妻がこんな状態にも関わらず、暗室の中でテレビを観ては笑っている舅が異様だった。

お決まりの様に、夫はパッタリと姑宅には行かなくなった。

自分の親のそんな姿を見たくは無いのだろうが、夫の場合は『関わりたく無い』が一番だったに違いない。




そしてその日が来た。

夜中に電話が鳴った。

舅からだった。

時計を見ると、午前2時だった。


『お母ちゃん、そっち行ってないか~?』

『いいえ、来てませんけど??』

『12時頃にトイレに立ったと思ったら、玄関が閉まる音がしてな。
 てっきりそっちに行ったと思とったんやが、今目が覚めたらまだ帰ってないんでな。』

『(`Д´) ハア??』



あんな状態の姑が、夜中に勝手に出て行っても、息子宅に行ったと思うか普通??

それも、そのまま舅は寝てしまった訳だ。

そして、2時間も経過してから気になったと言う訳だ。

昼間の2時じゃなく、夜中の2時に。

どんだけ無関心だよ!


夫婦喧嘩をするたびに、必ず夫は姑を

『第三者として立ち会って貰う!』

として、何時であっても呼んでいたので、舅は息子夫婦の喧嘩の仲裁に行ったと思ったらしい。

(自分を全面的にかばう母親を第三者と言う夫も夫だが、姑の常態が、息子夫婦の喧嘩の仲裁が出来るくらいの程度だと思っている舅に驚きだ。)


私は着替えて探しに出た。

姑は、すぐに見つかった。

マンションから出た真ん前に有るバス停付近を、ずっとウロウロしていた様子だった。

パジャマのままで、上には何も羽織らず、足は裸足だった。


姑から私の顔が見える様に前から近づいて、

『お義母さん♪
 帰ろ♪』


と、手を握って言った。


姑は私に


『あぁ、かづぷー!

 あんた、この近くに詳しいん?』



と言った。

その後、姑の話した事は、明らかに徘徊の症状だった。

『私の家はね、○○駅の線路のちょっと行った所でね。
 誰かに連れて来られたみたいなんやけど、帰り道が解らん様になってしもてね。
 どないして帰ったらエエか、かづぷー知ってるか?』


『お義母さんの家はコッチよ。』

『ソッチや無いよ!
 アンタも私を閉じ込める気やな!
 タクシー呼んで!!』


『お義母さん、タクシーは8時過ぎにならんと呼んでも来てくれへんよ。
 とりあえず、帰るにしても着替えして靴履き替えなアカンでしょ?
 ひとまず、休ませて貰おうよ。』


『アンタはこの辺に詳しいんか?』

『一応ね♪
 さぁ、行こ♪行こ♪』



姑を家にまで連れて行けば何とかなると思った。

そんなに突然、それも急速に痴呆から徘徊にまでなる物だろうか。


タクシーを呼ぶ時間まで、暫く休ませて貰える所に案内して貰えると思いながら、姑は私に手を引かれている。

歩きながらも姑は

『かづぷーの知り合いでも住んでんの?
 ここら辺詳しいんやね~。
 アンタ、昔ココに住んでたんか??』


と喋っている。


家の前まで連れて来て、表札を見せる。

『ほら、表札がお義父さんやろ?
 ココがお義母さんの家やんか♪』


ムッとする姑。

玄関の戸を開けて、靴箱の上に飾ってある物を見せた。

『コレはお義母さんが北海道で買って来たぬいぐるみやろ?
 本物の毛が使ってあるって言ってたやん。
 お義父さんとの写真も飾ってあるし、ココに有る靴もお義母さんのやろ?

 さぁ、中に入ろ♪』


その途端、姑は鬼の形相になった。


『ココまでして閉じ込めたいか!!

 私の家はココや無い!!

 私の私物をココまで運んで、表札まで付け替えて。

 そうまでして私を閉じ込めたいか!!』



夜中の2時に、大声を張り上げられては近所迷惑だ。

『とにかく、今はタクシー呼ばれへんから!
 それまでココで辛抱して!!』


ほとんど無理矢理状態で、姑を家に押し入れた。



姑の背中を押しながらリビングに行くと、舅がウイスキーの水割りを飲んでいた。

『おったか?
 ほな、僕は寝るわな。』



ブチ切れた!!



『お義父さん!

 今から夫を呼ぶんで、寝んとって下さい!!』



気楽な舅も、私の命令口調に驚いた様だった。

すぐさま夫に電話したが、なかなか出ない。


何十コール目かでやっと出た。



『お義母さん、おったよ。』

『お疲れ♪そしたら帰っておいでな。
 僕は寝とくから。』

『お義母さんな、徘徊やったんやで。
 ちょっと相談せなアカン事が有るから、着替えして子供連れて来てよ。』


『明日、僕仕事やでー!!』


『エエから、早よ来んかい!!

 オジイも寝ささんと待たせとんのや!

 来んかったら、明日っから会社に行けん様にしてもたるぞ!!』



夫は慌てて来た。

そのまま仕事に行く予定なのか、スーツに着替えていた。

子供たちは別室で寝かせた。


姑の状態と会話内容の全てを話して、これは痴呆の症状で、明らかに徘徊だと話した。

舅は黙っているだけだ。

夫も黙ったままである。


この時の表情が、舅も夫も


『で?それで終わりなら、寝てイイ?』


だった。

寝たいのは私の方だ。


『で?どうする訳?』

夫・舅『…………』

『どないするんか聞いてるんやけど??』

夫『どないするって言われても、僕会社が有るからな~。』

舅『僕は何にも出来へんで~。』


夫・舅『そりゃ、かづぷーにして貰わんと!!』



『(`Д´) ハア??』



その時姑が喋りだした。


『病院行くんやったら、近所は嫌や~!!

 近所の病院は、○○さんも□□さんも、△△さんもパートに行ってる。

 そんな所に行くんは嫌や~!!』



それを聞いて舅が言った。


『お母ちゃん、まともやないか♪』


『まともで有るか無いかは、私の事を医者でも無いのに診断すな!って言うた夫が一番、どないすればイイのか解ってるよな~?』


夫の顔は、明らかに『勘弁してくれよ』だった。

舅の顔は、『なにがどうなって、どうすりゃイイんだか??』だった。


『アンタは会社を休んで、車出して連れて行く!!』


夫に向かってそう言うと、舅がすかさず言った。


『かづぷーと息子に任せなしゃー無いなー。』




『お義父さんも行くの!!』



舅は、私と夫の二人で姑を病院に連れて行ってくれると思ったらしい。

一緒に行くんだと言っても、

『何しに行く必要が有るんだ??』

と言う。

夫だから行くんだと言うと、

『役に立たないから、行かなくてもイイと思う。』

と更に言う。

話を聞いて貰うから行かなきゃなんないと言うと、

『聞いても解らんから、かづぷーが聞いて来て解りやすく説明してくれればイイじゃないか。』

と、更に更に言う。

それを聞いていた夫が切れた。(笑)



『オヤジも行くんや!!』





なんで俺が行くのにオヤジが行かんでエエねん!!と思ったに違いない。


親子揃って変わんねーよ。






病院に行くと、玄関入ってすぐの長椅子に舅はチョコンと座り

『僕、ココで待っとくから♪』

と言って雑誌を手に取った。

『お義父さん、私、ココで帰ってもいいんですが??』

渋々着いて来た。


車を駐車場に停めて来た夫が来たので、姑の横に一緒に座っていて貰った。

受付で問診表を書き、姑の座っている方を向くと、姑が居ない。

『お義母さんは!?』

夫が舅の方を向いて、こう言った。

『オヤジが看とかなアカンやろ!!』

舅は舅で

『( ̄◇ ̄;)エッ?僕、看とけって言われてたか??』

だ。

親子揃って、新聞を広げて読んでいた。


姑はトイレに行きたかったらしく、さりとて場所が解らなかった様で、ウロウロしていた。

椅子に座らせた姑に、両脇の夫と舅が

『勝手にウロウロしたらアカンやないか!!』

と怒鳴っていた。

私はボソ~ッと

『勝手にウロウロするから病院に来とんねんやん。
 その勝手にウロウロする奴の横で、新聞広げて我関せずで読みふけっとる方が変なんやん。
 私が書くもん書いとるのに、なんでアンタら親子揃ってくつろいでるねん。』


と言ってやった。


診察の順番が来た。

『○○さ~ん』

ナースから呼ばれた。

当然椅子から立つ。

夫も舅も立つ。


診察室に向かおうとすると、歩く方向が違う。

『どこ行くん!!』


夫『トイレに…、我慢しとったんで…』

舅『新聞見たから、週刊誌取りに…』


『ホンマに、私ココで帰るで!!』


舅は渋々着いて来て、夫は急いでトイレを済ませた。

あのまま、私だけを姑と一緒に、診察室に入らせる気だったのだろう。


CTを撮った結果、脳の頭頂部から既に3分の1が萎縮しているとの事だった。

現時点では『縞状健忘』で、いわゆる『まだら呆け』だった。

ハッキリ解っている部分も有れば、全く解らない部分も有る。

そして、次第に何もかも解らなくなってしまうと言う事だった。



けれども、私と夫は内心、気が楽な部分が有った。

なぜなら、最初に書いてある

『お父ちゃんの退職金は、少なくとも6千万円はある。
 預貯金や株券だけでも3千万円ある。
 年金額は、お父ちゃんだけで1ヶ月27万円貰える。

 と、言う事は、アンタに何一つ面倒看て貰う事なんか無いんだから』


と言う部分だ。





介護にはお金が掛かる。

実際、姑が痴呆になって、今後の介護の心配をしなくてはならなくなった際に、常日頃姑が言っていた様に、家政婦や有料の老人ホームの話しは出た。


当然、その時点での所有財産額の話になる。

私は夫に、

『アンタは一人息子なんだから、誰にも頼れないんだよ。
 もしオジイが倒れでもしたら、どこにどれだけお金が有るのか知ってなきゃ、ウチの家計で支払う事になるんだよ。
 保険の事や預金通帳やハンコなんか、アンタだけは知ってないと困るからね。』


と、あくまでも、嫁が金をアテにしているなんて思われたら困るので、言い方も考えた訳だ。



正直言って、本気でアテになんかしていない。

ただ、約束通り、持っている金を全額はたいてでも、面倒を看なくてイイ様にして欲しいだけだ。



家に帰ってから、夫が舅に財産は全額でどれくらい有るのかと聞いた。

私は席を外しておくからと言い、別の部屋に行こうとした。

舅は書棚から貯金通帳2冊を持って来て

『コレだけや…』

と言った。

通帳を手に取り、中を見る夫。


夫『オヤジ、他には?』

舅『それだけや。』

夫『それだけって事は無いやろ?』

舅『それだけしか無いで?』

夫『貸金庫とか、定期とかが有るんと違うんか??』

舅『いいや、それだけや。』



何を言っているのか理解が出来ない。

『どないしたん??』



『こんだけしか無い訳が無いやろ!!』




ずっと前にもちょこっと書いたが、舅と姑は、買い物・国内海外旅行・グルメ三昧で、退職金も預貯金も、全て使っていたのだった。


おまけに生命保険にも、何一つ保険と言う物に入っていなかった。

舅に聞くと

『保険に入ると、早よ死にそうで縁起が悪いから。』

だったらしい。


挙句に姑は、年金を8割まで一時金として貰っていたので、月額7千円しか貰えなくなっていた。

まだら呆けの中、まともな時に姑に

『なんで一時金貰ってたん?』

と聞いたら

『お父ちゃんの年金が月額27万有るやろ?
 お父ちゃんは昔結核やって、今は糖尿や。
 脳梗塞にもなった。

 せやから、絶対にお父ちゃんが先に死ぬって思ってたから、私の年金が無くてもエエと思った。

 遺族年金が7割貰えて、私の年金合わせたら月額19万6千円や。
 マンションのローンも、お父ちゃんが死ねば払わんでもエエから、20万円近くも有ったら、固定資産税や管理費払っても、十分に食べて行けるとおもってな。

 だから、一時金貰って、お父ちゃんとシンガポールに行って来た。』


と言った。


で、自分が呆けてりゃ世話無いよ。

それも、自分は全く責任取らずだもの。






と言う事で、スッカラカンの舅姑の面倒を、同居してまで看なきゃならなくなった訳です。

舅は脳梗塞の後遺症で半身麻痺の上に弱冠アル中。

姑は、まだら呆けで、目を離したら勝手に出て行くわ、隣近所のチャイムを鳴らしまくるわ、110番や119番に電話を掛けて

『監禁されてます!!助けに来て下さい!!』

やら

『虐待されて、足腰が立たない様に殴られています!!』

やら言うし。



何度も言うけど、最初の約束って言うか、大口叩いていたクセに、スッカラカンだったとはどう言う事だよ!!

要するに、金の切れ目が縁の切れ目じゃないけど、金が切れたのと同時に呆けたって事ですよ。









まぁ、なんて言うか…

『なんで介護が出来たんですか?』

と言う問いには


・元々私が介護の仕事をしていて、介護が全く苦じゃなかった。

・姑が、私をイジメていた事をスッカリ完全に忘れてしまった。

・私以外の全ての人が解らなくなった。



と言う事ですかねぇ。



医者が言うには、長年私をイジメる事だけを生き甲斐にして来て、息子や夫や孫の事は、いわばどうでも良かったらしいです。

そして、自分にとって一番に都合の悪い事は全て忘れて、都合の良い様に話を作り替えたそうです。



『私はず~っと独身だったのよ~』

『へっ?だったら私は誰ですか?
 娘ですか?』


『何言ってるのよ、アンタは嫁のかづぷーでしょ♪』

『私が嫁なら、お義母さんは結婚して息子生んでますやん♪』

『…………あら…そうね…。』

『お義母さんの旦那さんは○○さんって言うて、息子は□□さんって言うでしょ♪』

『せやけど、なんやね。』

『どないしたん?』

『嫁のアンタに、こないに大事にして貰えるって言う事は』

『言う事は??』







『よっぽど私が嫁孝行して来たって事やね♪


 今までアンタを、さぞや大事にして来たんやろうね♪


 私って、エエ姑やったんやろな~♪


 徳を積んで来たって事やわ~♪』









姑からは、一言の『ありがとう』も無かったですよ。


だって、姑からしたら、自分が今まで嫁を大事にして来た徳を、恩返しして貰っているのですから、礼なんて言いませんよ~。

だからって、私とのバトルは完璧に忘れてしまった姑に、恨み辛みを言った所で、どうしようもない訳です。

嫁の私を大事に大切にしたから、自分が大事に世話をして貰えているんだと、礼の一つも言う事無く亡くなった姑。




成仏出来てると思います?(笑)

私は、今でも私の周りをクルクルと浮遊していると思います。


『この、ロクでもない嫁!!』


って言いながら。(笑)