結城弁護士から電話があった。

 

「麗子さん、今かかっている病院の診断書を、

もう一度そろえてもらえますか」

 

「診断書ですか? 

家裁に提出したものではだめなんですか」

 

「今の麗子さんの状態を、高裁に示したいんです」

 

「全部の病院ですか」

 

「はい。通院しているところは全部お願いします」

 

「わかりました」

 

電話を切ると、私はそれぞれの病院に予約の連絡をした。

 

 

 

 

それからしばらくして、

私は四通の診断書を持って、

結城弁護士の事務所を訪ねた。

 

「先生、診断書をもらってきました」

 

「ありがとうございます」

 

結城弁護士は、受け取った診断書に目を通した。

 

 

 

 

整形外科。

病名 両変形性膝関節症

立ち上がるときや階段の昇り降り、歩行時の痛みにより、日常生活に支障をきたしている。

 

内科。

病名 慢性胃炎、逆流性食道炎

一か月に一回の通院加療を要する。

 

耳鼻咽喉科。

病名 突発性難聴

現在、通院治療中。

 

そして、心療内科。

病名 全般性不安障害

今のところ就労不能です。

 

 

 

夫の不倫が発覚して4年半、

スポーツが好きで

健康だけが取り柄だった私はどこかに消えた。

 

 

「お預かりしますね」

 

「はい。よろしくお願いします」

 

結城弁護士は、四通の診断書をそろえた。

 

夫側の和解案には、

家は私に渡す。

 

慰謝料は三百万円。

 

そう書かれていた。

 

だが、家があっても、

それだけで生活していけるわけではない。

 

今の私には、日常生活さえ難しいときがある。

 

離婚したからといって、

翌日から働いて、

一人の力で生活していけるようになるわけではない。

 

 

離婚が成立した翌日も、

私はこの体で生きていかなければならないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

※本作品はフィクションです。

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