長く待つ 覚悟ができると

気持ちに 余裕が出てくる

 

自分が 喉が渇いていることに

気がついた

 

 

そういえば

家を出てから 5時間以上

 

母は 点滴を受けていたけど

私は 水分を

一切 口にしていない

 

 

薄暗い待合室の 壁際に

煌々と光る 自販機があったので

 

吸い寄せられる蛾のように

そこに行き 飲み物を買った

 

ふと 横を見ると

 

柱の陰に 隠れるように置かれた

古くて 小さめの自販機が

目に入った

 

 

何気に 近づいてみると

その機械では

マスクや紙おむつ 歯ブラシなどが

売っていた

 

上から

商品を 順番に見ていくと

 

な な なんと!

 

 

うっそ~~~~~っ

スリッパ 売ってんじゃ~ん

 

 

私は 接吻しそうなくらい

商品窓に 顔を近づけた

 

それは

よく ビジネスホテルであるような

不織布で作られた

ペラペラのスリッパだったけど

 

私にとっては

値千金

 

シンデレラの ガラスの靴のように

キラキラと輝いて見えたのだった

 

 

更に 目を凝らし

一つひとつの商品を 確認していった

 

すると

 

最下段に

まさか まさかのものまであった

 

 

うっそ~~~っ

ズボンまで 売ってんじゃ~ん

 

 

それは 透明な袋に入っていて

黒色の ジャージ素材に見えた

 

なんで

誰も 教えてくれなかったの?!

 

思わず声に出して 叫んでしまった

 

けれど

もはや そんなことは

どうでもよかった

 

そこに ズボンが売っていたことが

ただ ただ うれしかった

 

 

 

スリッパ 200円

ズボン 1600円

 

その古い自販機は

現金のみのようだった

 

しかも

一万円札は使えない

と 書いてある

 

 

私は

不安になりながら

自分のお財布を 覗いた

 

一万円札1枚と 千円札2枚

それから 小銭が入っていた

 

よかった

 

私は

千円札1枚と コインを800円分

投入口に入れた

 

コインは入っていった

 

でも お札は

何度やっても 戻って来た

 

なぜ?

 

もう一枚のお札と替えて 入れ直しても

戻って来る

 

 

…もしかして

 

この機械 壊れてる?

 

私は

機械を 軽く叩いてみたり

投入口のあたりを 覗いてみたり

 

すると

お釣りが出るところにある

小さな張り紙に 気がついた

 

「新札 使えません」

 

えっ

 

私は

自分の手にある 2枚のお札を

見た

 

目が合ったのは

 

二人の 北里柴三郎だった

 

 

ガ~~~~~~ン